慌てずに確認しよう!相続スケジュールについて

代表弁護士 豊田 耕史 (とよだ こうじ)

多くの方が勘違いされているのですが、相続の開始というのは、亡くなられた方から財産を受け取った日ではありません。

実は、人が亡くなった時点で相続は開始しており、中には期間が定められた手続きもあるため、しっかりと相続スケジュールを把握しておかなければ、手遅れになってしまう危険もあります。

かといって、慌ててしまっては円滑に手続きを進めることなどできないため、下記の相続スケジュールについて、慌てず落ち着いて確認し、相続手続きに臨みましょう。

相続開始後最初にすること

相続が開始したら、まずは死亡届を提出しなければなりません。

提出先は、亡くなった方の住所地、本籍地、死亡した場所、届け出る方の住所地、いずれかの管轄となる市区町村役場です。

この死亡届の届出人は、相続人である必要はなく、親族であれば問題ありませんし、事情次第では親族以外が届け出ることもあります。

要は誰でも構わないということ。

地域にもよりますが、葬儀社が代行してくれることもあります。

蛇足ですが、死亡届は左が「死亡届」、右が「死亡診断書(死体検案書)」となっていて、死亡診断書は医師が診療中(入院中)に死亡し、理由が明確な場合、死体検案書はそれ以外の場合(検死など)に作成されます。

どちらも証明内容に違いはありません。

なお、葬儀費用については相続税の控除対象になっているため、すべて残しておきましょう。

葬儀社への費用以外にも、お布施やお車代、葬儀を手伝ってくれた方への謝礼なども控除対象となっているため、メモで良いので手元に残しておくようにしてください。

相続開始から3ヶ月以内にすること

相続開始から3ヶ月以内にしなければならないのが、以下の4つです。

特に2と3は同時進行で行わなければ、期間の定めがある4の手続きに間に合わなくなってしまうため注意しましょう。

1、遺言書の検認

遺言書が見つかった場合の「検認」という手続きです。

遺言書の検認とは、家庭裁判所にて行う手続きで、遺言書の存在を明確にする手続きです。

この手続きは、公証役場で作成された「公正証書遺言」の場合は、省くことが可能ですが、それ以外は原則として必ず行わなければならない手続きになります。

検認について1点注意したいのが、遺言書は開封せずに手続きを行うという点です。

これは遺言書の偽装や改ざんを防ぐためなので、いらぬ誤解を招かないためにも、遺言書を見つけてもその場で開封はしないようにしてください。

2、相続人の調査・確定

相続人の調査・確定と聞いて、疑問符が出てきた方もいるのではないでしょうか?よく、「親の子どもは私だけだから相続人も私だけでしょ?」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、では、過去にご両親に離婚歴があり、その時に周りの親族の誰も知らなかった子どもがいたとしたらどうでしょう。

当然、ご両親の子どもであるため、まったく面識がなかったとしても、その方も相続人です。

こういった誤認を防ぐためにも、相続人の調査・確定というのは必ず行わなければなりません。

方法としては、亡くなった方の戸籍を出生から死亡まですべて辿っていくというものです。

なお、相続人が亡くなった方の兄弟の場合には、ほかの兄弟がいないかどうか調べるために、亡くなった方の両親についても、出生にさかのぼって戸籍を調べなければなりませんので、これはかなり手間のかかる作業になります。

3、相続財産の調査

遺産や相続財産と聞くと、現金や預貯金、不動産や株券、といったものを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は借金といったマイナスの財産も相続の対象である点に注意しなければなりません。

どういった相続財産があるのかしっかり調査しないと、負の財産のほうが多かった、なんて事態にもなりかねません。

中には、亡くなった方の借金は相続人が返さなければならないといったお考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、法的には必ず返さなければならないわけではありません。

以下で説明する、相続放棄・限定承認といった手続きもあるため、まずは相続財産についてしっかり調査し、その後、自身がどうしたいのかについて選択していくことを強くおすすめします。

4、相続放棄・限定承認

数ある相続手続きの中でも期間が定められているのが、相続放棄と限定承認です。

これらの手続きはいずれも相続開始から3ヶ月以内に行わなければなりません。

この期間をすぎてしまうと、原則的には認められないため、必ず期間内に行うようにしてください。

なお、この2つの手続きについて簡単に説明すると、相続放棄は相続権をすべて放棄するというもので、借金はもちろん、その他の財産についても相続できなくなるというもの。

限定承認はプラスの財産の範囲内に限り、マイナスの財産も相続するという手続きです。

こちらは、期間内にすべての相続財産について調査しきれなかった場合に利用されることがあります。

相続開始から4ヶ月以内にすること

相続開始から4ヶ月以内では、「準確定申告」という手続きを行わなければなりません。

こちらは自営業者の場合や、副業収入を得ていた方の場合に限ります。

通常、確定申告というのは、1年間の収入(1月1日~12月31日)について、3月半ばまでに行うのですが、被相続人の確定申告は相続開始から4ヶ月以内と定められています。

なお、サラリーマンの方である場合、納税については勤務先が年末調整を行ってくれるため、準確定申告の必要はありません。

日ごろから、被相続人が自ら確定申告を行っていた場合に必要となる手続きです。

相続開始から10ヶ月以内にすること

相続開始から10ヶ月以内にしなければならないのが、相続税の申告と納付です。

こちらも相続放棄・限定承認の手続きと同様、期間が定められていますので注意が必要です。

10ヶ月以内に申告・納税がされない場合、追加徴税といったペナルティも課されるため、必ず行いましょう。

なお、円滑な相続税の申告を行うためにも、期間内に以下の手続きを終えておくのが理想的です。

1、遺産分割協議書の作成

遺言書が見つからなかった場合は、遺産分割協議を行い、各々の遺産の取り分について相続人全員で話し合いをしなければなりません。

また、遺言書があった場合でも、すべての遺産についての記載がなければ、遺産分割協議は必須となります。

最終的には、遺産分割協議書を作成し、相続税申告や各種財産の名義変更といった手続きに使用します。

2、各種財産の名義変更

遺産に不動産が含まれる場合、遺産分割協議(書の作成)だけでなく、相続登記も終えておくのが望ましいです。

とはいえ、相続登記については特に期間の定めがあるわけもなく、相続税申告においても必須というわけではありません。

しかし、次の相続が発生してしまった場合、所有権がさらに細分化されるなど権利関係が複雑化してしまうため、可能な限り早くおこないましょう。

その他、預貯金や株式などの名義変更手続きも行っておくのが理想的です。

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